長崎国際大学 薬学部 薬品資源学研究室

MENU

研究紹介

研究紹介

最近の主な研究内容を紹介します。(2019.01.10更新)

Ⅰ.白斑治療薬開発を目指したメラニン合成促進成分の探索とその作用機序解明

 尋常性白斑症は、皮膚の基底層に分布するメラノサイトが何らかの原因で機能障害に陥りメラニンを供給できなくなることに起因する後天性疾患です。私たちは、より臨床にマッチした白斑治療法の確立を目指して、生薬エキスおよび天然化合物ライブラリーからメラニン合成促進物質を探索し、活性成分のメラニン合成に関与する酵素群やそれらを制御する転写因子やシグナル伝達分子への影響を解析しています。これまで、甘草や辛夷に含まれる成分がメラニン合成促進活性を有することを見出し、その作用機序を明らかにしました。現在も他の薬用植物などを用いて更なる解析を進めています。これらの結果の応用により、メラニンを直接誘導することによる白斑病治療の医薬品創出が期待されます。

≪本研究に関する最近の成果≫

  • 特願2017-149066, 2017年8月1日
  • 特願2015-112380, 2015年6月2日

白斑治療薬開発を目指したメラニン合成促進成分の探索とその作用機序解明

Ⅱ.不妊治療を目指した精子活性化成分の探索

 現在、既婚カップルの5組に1組が不妊症に悩んでいると言われており、とりわけ男性不妊の多くは原因が不明で、原因究明と有効な治療法の開発が切望されています。私たちは、本学薬学部の分子生物学研究室との共同研究として甘草に含まれる精子活性化成分を探索し、イソリクイリチゲニンとフォルモノネチンの2種が活性成分であることを特定しました。また、それぞれの成分を人工授精培地に添加すると受精率が格段に上昇することを明らかにしました。現在、生薬エキスおよび天然化合物ライブラリーのスクリーニングの結果、より活性の強いエキスや成分を見出しており、さらなる解析を進めています。

≪本研究に関する最近の論文≫

  • • International Journal of Reproduction, Fertility & Sexual Health, 4(5): 113-115. 2017.

不妊治療を目指した精子活性化成分の探索

Ⅲ.がん細胞におけるアポトーシス誘導およびオートファジー制御能を有する天然化合物の探索とその作用機序解明

 国内外で用いられている伝統医薬から、がん細胞増殖抑制能を持つものを探索し、活性成分の単離同定、さらにアポトーシス誘導機構を中心とした作用機序解析を行ってきました。これに加えて、現在、オートファジー制御能を持つ天然物に注目して研究を行っています。生薬エキスライブラリーのスクリーニングの結果、いくつかの生薬エキスががん細胞においてオートファジーを制御することを見出し、活性本体の単離同定および作用機序の解析を行っています。がん細胞において様々なアプローチで機能する天然物のメカニズム解明を目指しています。

≪本研究に関する最近の論文≫

  • Phytotherapy Research, 32(4):657-666. 2018.
  • The American Journal of Chinese Medicine, 45(7):1497-1511. 2017.
  • Pharmacognosy Magazine, 13(51): 459-462. 2017.

生薬成分に対するモノクローナル抗体を機軸とした分析法の開発と応用

Ⅳ.非薬用部位の有効利用に向けた研究

 生薬は漢方薬や医薬品の原料などとして広く用いられていますが、近年の世界的な健康志向の高まりから、その需要が増大しています。しかしながら、生薬の原材料である薬用植物の乱獲による資源の枯渇が深刻な問題となっていることや、国内での薬用植物栽培は未だ難しい状況であることなどなどから、薬用植物の栽培・供給に関する状況は極めて厳しい状況です。私たちは、限られた薬用植物の有効活用や薬用植物の国内栽培促進を目的として、これまで薬用として利用されなかった部位である「非薬用部位」の有効利用に注目しています。これまで、柴胡の地上部のがん細胞抑制能や当帰の地上部の抗炎症能を明らかにしてきました。現在、私たちは長野県上田市で栽培されている地黄の地上部の有効利用を目的として、活性評価および成分分析を行っています。

≪本研究に関する最近の論文≫

  • Phytotherapy Research, 29(12): 1956-1963. 2015.
  • Natural Product Sciences, 21(2): 71-75. 2015.

非薬用部位の有効利用に向けた研究

Ⅴ.生薬成分に対するモノクローナル抗体を機軸とした分析法の開発と応用

 甘草は70%以上の漢方処方に配合される重要な生薬です。甘草には500種類を超える成分が同定されており、その成分分析は大変複雑です。そこでグリチルリチンとフラボノイドのリクイリチゲニンに対するモノクローナル抗体を用いたダブルイースタンブロッテイングに成功しました。下の図ⅠAは、通常の薄層クロマトグラフィーでグリチルリチンとリクイリチゲニンを検出したものです。一方、Bはグリチルリチンとリクイリチゲニンをそれぞれの特異的モノクローナル抗体を用いたダブルイースタンブロッテイングで検出したもので、図Ⅱはそれぞれのスポットを定量化したものです。500種以上の成分の中から2成分のみを色分けして検出出来るのは本法のみで画期的な手法と言えます。本研究室で開発した天然物に対するモノクローナル抗体を用いた様々な手法は目的成分を特異的かつ高感度に検出できる簡便な手法として注目されています。

≪本研究に関する最近の論文≫

  • Analytical Letters, 51(8): 1147-1162. 2018.
  • Journal of Immunoassay and Immunochemistry, 38(3): 285-298. 2017.

生薬成分に対するモノクローナル抗体を機軸とした分析法の開発と応用

Ⅵ.顧みられない熱帯病(NTDs)への治療応用を目指した薬用植物由来シーズ開発

 科学技術振興機構(JST)と国際協力機構(JICA)の初めての共同プロジェクトである地球規模課題対応国際科学技術協力プログラムScience and Technology Research Partnership for Sustainable Development (SATREPS) が2010年にスタートし、2015年3月で終了しました。本プロジェクトは東京医科歯科大学が申請し、当研究室が協力して推進したプロジェクトです。研究内容の一例として、ハエの媒介により引き起こされるアフリカ睡眠病の治療薬を探索しています。アフリカ睡眠病の原因となる寄生虫トリパノソーマを殺すガーナ産植物を探索し、活性成分を突き止めて、X線構造解析により右の構造式 (Molucidin) であることを特定しました。2015年4月から、本プロジェクトは日本医療研究開発機構 (AMED) の感染症研究国際展開戦略プログラムに採択され、さらなる研究を進めています。

≪本研究に関する最近の論文≫

  • Journal of Pharmaceutical and Biomedical Analysis, 164(5): 475-480. 2018.
  • Phytotherapy Research, 32(8): 1617-1630. 2018.
  • European Journal of Medical Plants, 20(2): 1-14. 2017.

顧みられない熱帯病(NTDs)への治療応用を目指した薬用植物由来シーズ開発

研究設備

研究室設備

  • HPLC ×2
  • ロータリーエバポレーター ×2
  • 凍結乾燥機
  • 吹付濃縮装置
  • 濃縮装置(コンビニエバポ)
  • 人工気象器
  • ルミノイメージアナライザー(LAS-4000)
  • UVトランスイルミネーター
  • クリーンベンチ(動物細胞用) ×2
  • クリーンベンチ(植物用)
  • CO2インキュベーター ×2
  • 倒立顕微鏡
  • 実体顕微鏡
  • ウオーターバス ×3
  • 遠心機 ×2
  • 冷却遠心機
  • ディープフリーザー
  • 振とう培養器
  • PCR ×2
  • リアルタイムPCR
  • マイクロプレートリーダー
  • マイクロプレートシェーカー
  • オートクレーブ

(その他、天然物分析、細胞培養、各種分子生物学的解析に必要な機器があります。)

薬学部共同機器

  • NMR
  • LC/MS
  • 共焦点レーザー走査型顕微鏡
  • フローサイトメーター
  • 超遠心機
  • マルチプレートリーダー
  • ゲル・Western Blotting 画像撮影解析システム
  • 電子顕微鏡

※ 上記以外にも各種機器があり、充実した環境で研究を行っています。
※ 共同研究設備として、動物実験室、P2レベルクリーンルーム、RI室などがあります。

Page Top