研究紹介
研究紹介
最近の主な研究内容を紹介します。(2024.11.11更新)
Ⅰ.難治性皮膚疾患の治療薬創出を目指した天然化合物の探索とその作用機序解明
尋常性白斑は治療抵抗性かつ再発頻度も高い難治療性の色素異常症で、特に露出部位に生じた場合、患者のQOLを著しく低下させます。本研究室では白斑治療薬開発を目指してメラニン合成を促進する天然化合物の探索を行っています。これまでシンイ、チョウジ(クローブ)、カンゾウなどから単離した成分にメラニン合成促進活性を見出し、それらの作用機序を解明してきました。現在、より高いメラニン合成促進活性を示す天然化合物の探索を行っており、新しい白斑治療薬の創出を目指しています。
また、アトピー性皮膚炎の治療薬創出を目指した研究もスタートしています。アトピー性皮膚炎は国民の約45万人が罹患している国民病ですが治療満足度は十分とは言えず、新たな治療薬開発が期待されています。近年、アトピー性皮膚炎において皮膚バリア機能の低下が重要な要因であることが注目され、皮膚バリア機能の調節機構解明と改善に関する研究が活発に行われています。本研究室では、生薬エキスライブラリーのスクリーニングにより、皮膚バリア機能を改善する天然物の探索と活性成分の作用機序解明・標的分子の同定を行っています。
【本研究の関連論文(抜粋)】
Planta Medica, 88(13):1199-1208. 2022.
Journal of Oleo Science, 71(9): 1403-1412. 2022.
Biomedical Research, 43(2):31-39. 2022.
【特許出願】
特願2023-025264, 特願2017-149066, 特願2015-112380
Ⅱ.薬用植物の非薬用部位の有効利用に向けた研究
生薬は漢方薬や医薬品の原料などとして広く用いられていますが、近年の世界的な健康志向の高まりから、その需要が増大しています。しかしながら、生薬の原材料である薬用植物の乱獲による資源の枯渇が深刻な問題となっていることや、国内での薬用植物栽培は未だ難しい状況であることなどから、薬用植物の栽培・供給は極めて厳しい状況です。本研究室では、限られた薬用植物の有効活用や薬用植物の国内栽培促進を目的として、これまで薬用として利用されなかった部位である「非薬用部位」の有効利用に注目しています。これまで、トウキの地上部の抗炎症能やジオウの葉の降圧作用などを明らかにしてきました。また、附属薬用植物園において、注目している薬用植物の栽培研究も行っています。本研究の一部は、企業や地域活性化を目指す団体の方々と共同で進めています。
【本研究の関連論文(抜粋)】
Chemical and Pharmaceutical Bulletin, 71(7):508-514. 2023.
Pharmacognosy Magazine, 16(67):128-131. 2020.
Phytotherapy Research, 29(12): 1956-1963. 2015.
Ⅲ.オートファジー制御能を有する天然化合物の探索とその作用機序解明
国内外で用いられている伝統医薬からオートファジー制御能を持つ天然化合物の探索とその作用機序の解明を行っています。オートファジーとは、細胞内の不要な物質を分解し、細胞内の状態を一定に保つ仕組みのことです。オートファジーを制御する天然化合物は、糖尿病、脂質異常症、がんなどを標的とした新たな医薬品シーズの創出につながる可能性を秘めています。本研究室では、生薬エキスライブラリーのスクリーニングの結果、漢方薬に配合されているゴボウシやモッコウが、がん細胞においてオートファジーを制御することを見出し、それらの活性本体を単離・同定しました。現在、炎症や皮膚のターンオーバーに着目して、オートファジーを制御する天然物の探索とその作用機序の解明を進めています。
【本研究の関連論文(抜粋)】
Journal of Natural Medicines, 75(1):240-245. 2021.
Life, 11(8):749. 2021.
Journal of Natural Medicines, 74(3):525-532. 2020.
Ⅳ.生薬成分に対する特異的モノクローナル抗体をツールとした応用研究
本研究室では、これまで生薬成分に特異的に結合するモノクローナル抗体を数多く作製し、これらのモノクローナル抗体をツールとしたユニークな分析法や応用活用法を世界に発信しています。これらのモノクローナル抗体を用いた応用研究として、生薬成分の相互作用の解析、生薬成分の細胞および生体内での挙動や標的分子の同定を行っています。
【本研究の関連論文(抜粋)】
Journal of Natural Medicines, 78(1):160-168. 2024.
Food Chemistry, 403:134339. 2023.
Chemical and Pharmaceutical Bulletin, 70(10): 694-698. 2022.
Ⅴ.薬用植物に関する国際共同研究
2010年より、ガーナのNoguchi Memorial Institute for Medical Research (野口医学記念研究所)やCentre for Plant Medicine Research (植物医学研究センター) と共同で、ガーナの薬用植物による顧みられない熱帯病 (NTDs) への治療応用研究を実施してきました。2020年からはベトナムのフェニカ大学と共同研究契約を締結し、ベトナムニンジンを中心とした薬用植物の研究を開始しています。
【本研究の関連論文(抜粋)】
Journal of Ethnopharmacology, 309:116355. 2023.
Journal of Pharmaceutical and Biomedical Analysis, 164:475-480. 2019.
Phytotherapy Research, 32(4):657-666. 2018.
研究設備
研究室設備
- HPLC ×2
- ロータリーエバポレーター ×2
- 凍結乾燥機
- 吹付濃縮装置
- 濃縮装置(コンビニエバポ)
- 人工気象器
- ルミノイメージアナライザー(LAS-4000)
- UVトランスイルミネーター
- クリーンベンチ(動物細胞用) ×2
- クリーンベンチ(植物用)
- CO2インキュベーター ×2
- 倒立顕微鏡
- 実体顕微鏡
- ウオーターバス ×3
- 遠心機 ×2
- 冷却遠心機
- ディープフリーザー
- 振とう培養器
- PCR ×2
- リアルタイムPCR
- マイクロプレートリーダー
- マイクロプレートシェーカー
- オートクレーブ
(その他、天然物分析、細胞培養、各種分子生物学的解析に必要な機器があります。)
薬学部共同機器
- NMR
- LC/MS
- 共焦点レーザー走査型顕微鏡
- フローサイトメーター
- 超遠心機
- マルチプレートリーダー
- ゲル・Western Blotting 画像撮影解析システム
- 電子顕微鏡
※ 上記以外にも各種機器があり、充実した環境で研究を行っています。
※ 共同研究設備として、動物実験室、P2レベルクリーンルーム、RI室などがあります。