長崎国際大学 薬学部 薬品資源学研究室

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ボタニカルアートライブラリー

ボタニカルアートライブラリー

ボタニカルアートライブラリーは毎月更新していきます。

ボタニカルアートライブラリーは、正山征洋名誉教授・特任教授にご執筆いただいております。

ザクロ

ザクロ

ザクロ科に属する落葉低木で原産地はイラン、トルコ等の中近東と考えられています。初夏紅橙色の合弁花を開き、秋に多くの種子を内蔵する果実を結びます。種子を取り巻く果肉は酸っぱくてジューシーなので乾燥地域で良く食べられます。樹皮は柘榴皮と呼び、ペレチエリン、イソペレチエリン等のアルカロイドを含んでいます。ヒトには低毒性で、条虫に強い毒性をしめすため条虫駆除薬として用いられていましたが、現在日本では用いられません。一方果皮はプニカタンニン等を多く含み、古来より口内のただれ、歯痛、下痢等に用いられてきました。本画は1800年中期のステップによる作品です。

ムラサキ

ムラサキ

ムラサキ科に属する多年生草本です。葉や茎には多くの毛が生えています。初夏に白い小さな花を開き直に小さな白い種子を結びます。根を紫根(しこん)と呼び、火傷や痔疾等に用いられます。30年程前には根のタンク培養が行われバイオ口紅が発売された事を記憶しています。根の紫色成分はシコニンです。先月のアルカンナの主成分、アルカンニンとは光学異性体です。本画の作者、年代は不詳です。

アルカンナ

アルカンナ

アルカンナは、ムラサキ科に属する多年草です。トルコ辺りに多く自生しています。根はアルカンナ根(アルカネット)と呼び染料として又医薬品として流通しています。アルカンナ根にはアルカンニンと呼ばれるナフトキノン類が含まれており、アルコールで抽出すると赤色となります。アルカンニンは日本にも自生しているムラサキの根(紫根)に含まれる紫色素のシコニンとは旋光度が逆の光学異性体となっています。アルカンナ根エキス(商品名:ストプラスチンレッド)は外傷性潰瘍、ハンセン病性潰瘍、褥瘡(床擦れ)等に適用され、また、治癒し難い無痛性潰瘍に対しては4~6週間塗布することにより80%の治癒率があると言われています。一方、漢方薬の「紫雲膏」も抗炎症作用が強く火傷、痔 疾、褥瘡等に用いられますが、近年ペルーで抗リューシュマニア作用薬として臨床に供され、エチオピアエチオピア・アーマー医学研究所で臨床試験が行われました。なお、これらのデータの詳細は、正山征洋著「東洋と西洋の紫色素」(長崎国際大学論叢、第16巻、177~185頁、2016年)をご参照下さい(下記リンク)。本画の作者、年代は不詳です。

長崎国際大学学術機関リポジトリ「東洋と西洋の紫色素

アカキナノキ

アカキナノキ

アカキナノキは、アカネ科に属する熱帯性の高木です。元々は南米に自生していましたが、大航海時代にマラリアの治療用として1638年スペインへ導入され、スペインのChinchon伯爵婦人がエキスでマラリアを治療したことに因んで1742年にリンネにより学名がCinchona succirubraと命名されました。1820年にはフランスの薬剤師Pelletier、Caventouにより活性成分キニーネが単離されました。マラリアの蔓延、キニーネ不足から1855年に種子がジャワ島へ移されプランテーションがスタートしました。分子式の提出(1854年)、平面構造決定(1908年)、立体構造決定(1944年)等、有機化学をリードしたのがキニーネで、クロロキンの合成にも関わっています。これらの事から如何にマラリアが蔓延していたかを垣間見ることが出来ます。キニーネはマラリア原虫に対して耐性が出たため現在では使用されていません。代わりに中国のクソニンジンから単離されたアルテミシニンの誘導体が使われています。因みにマラリア関連のノーベル賞受賞者はマラリア患者からマラリア原虫発見、ハマダラカがマラリアを媒介することの発見、殺虫剤DDTの合成、クソニンジンからアルテミシニンの発見等4名です。現在でもマラリア患者は年間約2億人で死亡者が約54万人(2013年)で、世界的には最も規模の大きな感染症の一つです。COVID19よりも深刻です。本画はSchenk Herfortによる1857年の作品です。

リンドウ

リンドウ

リンドウはリンドウ科に属し、山地の草原に自生する多年生草本です。茎に葉が対生に付き、秋になると茎の先端に紫色の花が数輪開きます。ただし、リンドウの花は光が当たらないと開花しません。花言葉は「正義」、「誠実」、「貞淑」です。根茎は竜胆(りゅうたん)と称して、体を冷やす漢方薬、例えば竜胆瀉肝湯(りゅうたんしゃかんとう)等に配合され、尿路の炎症をとり泌尿器疾患を改善するとともに、苦味健胃薬としても用いられます。
本画はカーチスによるボタニカルマガジン(1800年代)の作品です。

アサガオ

アサガオ

ヒルガオ科サツマイモ属の1年草で、左巻のつるが伸びます。アサガオ(朝顔)は奈良時代の末期に遣唐使が薬用として種子を持ち帰ったと言われています。江戸時代に園芸品種としての育種が広く行われて多種多様な品種が作り出されました。種子を牽牛子(ケンゴシ)と呼び薬用とします。
牽牛子には樹脂配糖体と呼ばれる成分が含まれ、基本的には脂肪酸と糖類が結合した構造をしており、下剤として用いられてきました。樹脂配糖体はエーテルに溶ける成分ヤラピンとエーテルに溶けない成分コンボルブリンに分けられて、それぞれが構造決定され新しい生物活性に関する研究が行われています。
峻下剤としては種子の粉末を1日量0.5-1.5g、緩下剤としては0.2-0.3gを服用します。牽牛子は作用が強いので妊婦や体の弱った人は避けたほうがよいでしょう。また、虫刺されやしもやけにも用いられます。
本画は1700年代半ばにカーチスによる手彩色の作品です。花色も地味で花も小さく原種に近いものと推察されます。

キダチアロエ

キダチアロエ

ユリ科に属する多年生草本で日本の暖地で広く栽培され、真冬に赤い花が咲きます。この植物は下剤成分を含んでいますが、量が少ないので下剤の作用は弱く、むしろお腹を整える働きをします。また、やけどした直後に塗れば治りが早くケロイドにもならないので広く愛用されています。暖地で大規模に栽培され、葉のゼリー状の部分を取り出し、ヨーグルト等に入れられます。一方、通常のアロエはアフリカに自生する木本性多肉植物で、高さ6mにも達し、葉を切ると液が出ます。これを集めて乾燥したものがガラス状の蘆薈(ロカイ)で、とても苦くアントラキノン類の含量が高く強い下剤(峻下剤)として用いられます。本画は1800年中期のステップによる作品です。

アオキ

アオキ

ミズキ科に属する低木で、反日蔭の湿気の多い地に自生し、また広く庭に植栽されます。雌雄異株で3~5月頃、雌株の花序に数個、雄株の花序には多数の、いずれも紫褐色の花をつけます。夏には楕円形の果実をつけ、冬に通常は赤い果実を結びます。なお、園芸品種も多く、葉にふが入るものや果実が黄色なものなど多種みられます。新鮮な葉を火で焙りドロドロにして火傷やしもやけに塗ります。また、葉をもんで柔らかくして腫れ物に貼ります。キハダ(黄柏)を抽出してエキスをつくり乾燥させたものが陀羅尼助(だらにすけ)と呼ばれ、胃腸薬として下痢等に用いられますが、陀羅尼助の艶を出すためにアオキの葉を加えて煮詰めます。

キダチチョウセンアサガオ

キダチチョウセンアサガオ

ナス科に属する低木のキダチチョウセンアサガオです。夏頃から秋にかけて白や黄色、ピンク等のラッパ状の花を開きますのでトランペットツリーやエンジェルトランペットとも呼ばれます。通常は一重の花が多いですがダブルも見られます。葉や茎にはアトロピンやスコポラミンを含有 し、通常は毒植物に分類されますが、アトロピン、スコポラミンはれっきとした医薬品で、副交感神経遮断薬として胃の急な痛みが起きた時などに用いる他に瞳孔散大や胃腸の蠕動運動抑制等の目的で用いられます。本画は、パキソンによる1834年の作品です。

ダイオウ (大黄)

ダイオウ

ダイオウはタデ科に属する多年生草本で、通常は高山地帯に自生します。また、生育環境が同じような地で栽培されます。大きい株は人の頭ほどもある根茎を掘り出し、輪切りにして冬の寒い屋外で乾燥します。
本画にはロシア大黄と説明されていますので、中国から輸入された大黄がロシアで集荷され市販されていたものと考えられます。形態から品質的には若干劣る馬蹄大黄に属します。品質的な記述は有りませんが、アントラキノン類は十分含まれており、下剤用に用いられたものと考えられます。大黄は下剤としての使用ばかりでなく、アルコール類の色つけとしての使用があったとの記述も見られます。
本画は1852年ウインクラーにより出版された薬用植物の本の中の1ページで、手彩色によるものです。

コエンドロ Coriandrum sativum

コエンドロ

コエンドロはコリアンダーとも呼ばれ、地中海沿岸原産でセリ科に属する1年草です。古代エジプトや古代ローマ、古代ギリシャにおいて薬草としてまた、香草として珍重されました。日本へは10世紀頃に渡来しています。草丈も低く華奢な植物ですが、カメムシ様の強烈な香りを放ちますので、好き嫌いの分かれるスパイスです。近年はタイ語の「パクチー」がよく使われ、タイ料理を中心に熱帯アジア各国の料理に用いられ、やみつきになった人も少なくないようです。果実はテルペン含量が高く芳香性健胃薬として用いられます。本作品の作者、年代共不詳です。

ウイキョウ Foeniculum vulgare

ウイキョウ

地中海沿岸が原産地で明治初期に渡来しました。セリ科に属する多年草で、草丈は1~2mとなり、糸状に分かれた葉をつけます。夏にかけて傘を開いたような花茎を伸し小さな黄色花を多数開き、秋には分果が熟します。果実は精油含量が高く、主成分はアネトールでその他モノテルペン類が多種含まれています。果実は90%以上がスパイスとして使用されますが、芳香性健胃薬として胃腸薬にも配合されます。また、漢方では安中散に桂皮、茯苓、牡蠣、甘草、良姜、延胡索、縮砂等と共に茴香が配合され、胃に痛みがある時の健胃薬として、また、去痰作用も期待できます。
本画にはウイキョウがあしらってあり、パンにのせられ、また、ウイキョウを加えたピクルスを作っているように見受けられます。本作品の作者、年代共不詳です。

ホップ Humulus lupulus

ホップ Humulus lupulus

クワ科に属する雌雄異株のつる性の多年草です。日本各地に自生しているカナムグラの仲間で、アサ(大麻)とも近い種です。夏から秋にかけて開花しますが、雌花を採取してプレスしたものがホップです。ホップは麦汁に加えて加熱してビールの香りと苦みをつけます。ヨーロッパ、特にドイツでは、支柱を立ててワイヤーを張り栽培している様子を車窓から見ることが出来ます。日本においても岩手、山形、秋田各県で栽培されています。ホップの成分の研究も古くから行われていて、精油成分、苦味をもつフムロン酸類、プレニールカルコン類、プレニールフラボノイド等が単離構造決定されています。ホップは古くから鎮静作用、睡眠作用、健胃作用をもつ民間薬として用いられており、ヨーロッパではカプセル入りのホップが売られています。本画は1800年代末のカーラーによる作品です。

ミシマサイコ Bupleurum falcatum

ミシマサイコ Bupleurum falcatum

セリ科に属する多年草です。図の様に葉がイネ科植物に似ています。夏に入ると傘型の花穂をつけ小さな黄色の花を開きます。 Bupleurum属植物は世界に広く分布しており、ヨーロッパでも目にすることがあります。本ボタニカルアートもヨーロッパにおいてエッチングが作られ手彩色された1800年代の作品です。根を柴胡と称し、柴胡剤と呼ばれ慢性化した病気に対する漢方薬に配合される、大変重要な生薬です。

参考図書のご紹介

ボタニカルアートにご興味のある方は、下記の書籍をご覧ください。

「ボタニカルアートの薬草手帖」

著者 正山 征洋
出版社 西日本新聞社
出版日 2014/7/28
書籍購入はこちら
ボタニカルアートの薬草手帖

「薬草の散歩道」

著者 正山 征洋
出版社 九州大学出版会
出版日 2003/10
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薬草の散歩道

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